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Kichi's Journal吉のワイン⽇記

2024/09/08

クシノマブロ 〜ギリシャ・マケドニアの新たな王〜

吉 Kichi

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

ワインの醸造家
エキスパート

北ギリシャの最高級黒ブドウといえば、クシノマヴロ。ブドウそのものが 「酸っぱい黒」を意味するギリシャの土着品種について紹介するよ!

ギリシャ最高級の黒ブドウ

北ギリシャの最高級黒ブドウといえば、クシノマヴロ(Xinomavro)で決まりだ。

この「クシノマヴロ」という名前の由来は、すごくわかりやすいよ。

ギリシャ語で「クシノ」は「酸っぱい」、「マヴロ」は「黒い」を意味してるんだ。つまり、このブドウそのものが 「酸っぱい黒」と呼ばれてるってこと。

名は体を表すというように、生き生きとした酸味と、海の色に似た深い青色をした果皮は、まさに名前そのものだよ。


ギリシャのネッビオーロ

 

時の試練に耐えられるワインを造る際、ワインメーカーにとって最も重要な要素は酸とタンニンだ。

酸味は、ワインがフレッシュさを保ち続けるように、防腐剤のような働きをしてくれる。そしてブドウの皮に含まれるタンニンは、年月が経つにつれて、ワインをよりシルキーに、よりソフトな口当たりに熟成させてくれるんだ。

実際、クシノマヴロは熟成に適することから、素晴らしく美味しいバローロワインを生み出すピエモンテの貴重なブドウになぞらえて、「ギリシャのネッビオーロ」と呼ばれているよ。

クシノマヴロがギリシャの高貴な黒ブドウとされているのも、不思議ではないよね。


クシノマヴロは、ネッビオーロはもちろんのこと、力強いカベルネ・ソーヴィニヨン、ダークな味わいのマルベック、あるいは「小さな巨人」の異名をとるプティ・ヴェルドなど、他のタンニンの強い名だたるブドウ品種にも匹敵するギリシャ最高のブドウなんだ。


クシノマヴロの産地ナウサ

繊細で手間のかかるクシノマヴロの産地は、ギリシャ北部の中央マケドニア地方に位置するナウサという美しい町だよ。そう、アレクサンダー大王の興隆を目の当たりにした、かの有名なマケドニアが故郷なのさ。

アレクサンダー大王の時代に存在していたかどうかは明らかではないけれど、ギリシャでは何百年もの間、クシノマヴロを宗教的な信心深さをもって栽培されてきた。

そして僕たちは今になってようやく、その可能性と多様性の全容を理解し始めたところだと言えるんじゃないかな。


クシノマヴロには愛と情熱が必要

 

例えばクシノマヴロからは、注目に値するロゼワインやスパークリングワインも造ることができるんだ。スパークリングワイン用のクシノマヴロは、とっても涼しい気候の畑で栽培されているよ。

ギリシャのワイン造りにテクノロジーが導入されるようになったことで、すべてのギリシャワイン全体の平均的な品質が向上したことは間違いない。

でも、技術的にどれほど優れていたとしても、それだけでは十分ではないんだ。

ブドウを本当に理解するためには、愛と情熱も技術と同じくらい必要不可欠だから。

これこそがまさに、先見の明のあるワインメーカーであり、ギリシャの現代ワイン造りの英雄ともいえるアポストロス・ティミオポロス氏の人生をかけた使命なんだよ。

ティミオポロス氏はこのブドウの研究に惜しみなく労力を費やし、光り輝くようなエレガントさとギリシャらしさを兼ね備えたクシノマヴロワインを生み出したんだ。


クシノマヴロ大王にカンパイ!

じゃあ最後に、クシノマヴロワインそのものについて。

クシノマヴロのいちばん印象的な点をひとつあげるなら、このワインの特徴でもある淡い色を作り上げる繊細なフェノールだよ。

実際クシノマヴロワインは、パッと見、オレゴンやチリのピノ・ノワールと間違えることもある。

でも、その淡い色に騙されないで。

熟成が進んでいない若いクシノマヴロを飲んだら、吹雪の中で松ぼっくりを舐めたのかと思わせるような、獰猛で角ばったタンニンに驚いちゃうかもしれない。

だからクシノマヴロを本当に楽しもうと思ったら、ワインを熟成させる必要があるよ。

ワインを磨き、滑らかで美味しくするためには、じっくり時間をかけること。

そして、味と香りが完全に解きほぐされたら、この上もなく美味しいワインを飲むことができるんだ。

クシノマヴロはまた、まるで周囲の世界を吸収する小さなスポンジであるかのように、栽培された場所(テロワール)の雰囲気を丸ごと、飲む人に伝えてくれる。

つまりクシノマヴロを飲むことは、黒オリーブ、トマト、日干しハーブ、ラズベリー、サワーチェリーといった、ギリシャそのものの香りを飲むようなものなんだ。

 

クシノマヴロは現在、ナウサをはじめギリシャ全土で栽培されているよ。

この吸収力のあるブドウがテロワールを包み込み、そこに漂う香りを結晶化させて、最後の一滴まであなたに届けてくれることは間違いない。

さぁ、マケドニアに誕生した新たな王に祝杯を。

クシノマヴロ大王、バンザイ!