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Kichi's Journal吉のワイン⽇記

2024/09/15

アシルティコ〜サントリーニ島を超える逸品〜

吉 Kichi

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

ワインの醸造家
エキスパート

サントリーニ島が産地として有名な、ギリシャで最も知られているワイン用ブドウアシルティコについて、紹介するよ!

ああ、サントリーニ島!

エーゲ海の紺碧の海に浮かぶ、このギリシャののどかな火山島は、オールインクルーシブのクルーズ船に乗ってやってきた大勢の観光客で溢れかえる。

彼らはみんな自撮り棒を持ち、早撃ちカウボーイ顔負けの素早さでクレジットカードを限度額いっぱいまで使うのさ。

こうしたSNSがだいすきな人たちは、サントリーニ島のことを絵に描いたような景色が地球上のどこよりもたくさんある楽園だって思っているかもしれない。

実際、サントリーニ島ではへたくそな写真を撮る方が難しいくらいだよ!

もし撮った写真のできがよくなかったとしたら、その人はおそらくレンズに太っちょの指を当てちゃったんだろうね。

 でも、サントリーニ島は、実はそれだけの島ではないんだ。

 

特殊な形のブドウの木

サントリーニ島がギリシャで最も有名なワイン用ブドウの産地であることはあまり知られていない。

そのブドウとは、アシルティコだ。

サントリーニ島のアシルティコについてまずびっくりするのは、そのユニークな栽培方法じゃないかな。

地面近くを這う低い木の枝が「巣」や「籠」のような形に編まれ、ブドウの木の葉が天蓋を形作って、まるで乳を飲ませる新米の母猫のように中のブドウを守るんだ。

ギリシャでは、この「ブドウの木の籠」は「クルーラ」と呼ばれている。

 

なんでこんな特殊な形をしているかって?

サントリーニ島でパナマ帽が遠くに飛ばされちゃって、どれだけ走っても追いつけないスピードで石垣を転がり落ちていくのを見たことがある人なら、その理由がわかるんじゃないかな。  

そう、この島はとっても風が強いことで有名なんだ。

 

過酷な土壌が酸味を生む

さらに過酷なことに、サントリーニ島の土壌は、定義上は砂漠に分類されるほど乾燥している。

そして朝食の時間を少し過ぎただけのころから、太陽が溶け出したかのような容赦ない暑さが襲ってくることを想像してみて。

こんな厳しい条件下にもかかわらず、アシルティコは、ほとんど「野性的」とも言える、削り取られたような酸味を保ちながら生い茂っているんだ。

この特別な酸味は、島の火山性土壌がブドウの木に十分なストレスを与えているためだ。地中の水分が少なく、まだブドウが若い内に収穫することも、酸味を生み出す秘訣だよ。

 アシルティコは現在、キクラデス諸島からマケドニア、トラキア、クレタ島に至るまで、ギリシャの多くの地域で栽培されている。さらに、アシルティコの人気が高まった結果、現在ではオーストラリアでも栽培と醸造がされているくらいだよ。

 

エリア別のアシルティコの違い

「じゃあ、ギリシャの他の地域のアシルティコは、サントリーニ島のものと比べてどうなの?」と疑問に思う方もいるかもしれない。

よくぞ聞いてくれました!

その答えはズバリ、酸味の違いさ。

ギリシャの他の地域で栽培されるものに比べ、サントリーニ島のアシルティコは時に「制御不能」とさえ言われるくらい、酸度が高いんだ。

サントリーニ島のアシルティコは酸味、牡蠣殻、石灰、塩、火打石の風味があるのが特徴的で、他のアシルティコはベリー類や新鮮な柑橘類、ハーブの香りを感じるんだ。

共通しているのは、柑橘系の果実のニュアンスかな。

どちらのワインもそれぞれに個性があり、栽培されたテロワールを忠実に表現している。

言い換えると、サントリーニ以外の地域で作られるアシルティコは、サントリーニ産のものよりも果実味が豊かで、口当たりが柔らかい傾向にあるよ。

 

 

北ギリシャ・マケドニア地方のアシルティコ

今回、GrapeFoxからお届けするのは、北ギリシャ・マケドニア地方のアシルティコだよ。

Aslanis Family Winery アシルティコ 2022

このワインは、アシルティコの典型的な風味に、よりマイルドな酸味と、マケドニアのテロワール特有の「スパイシーさ」が加わっている。 

 

夏の長い一日が終わり、夕暮れが沈む頃、デッキチェアに寝そべってアシルティコを飲み比べてみて!

どちらが好みに合うか、きっとすぐわかるはずだよ。