GrapeFox公式LINE
ホーム>吉のワイン⽇記>ワインの宿敵「フィロキセラ」とは?

Kichi's Journal吉のワイン⽇記

2022/10/02

ワインの宿敵「フィロキセラ」とは?

吉 Kichi

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

ワインの醸造家
エキスパート

ワインメーカーはワインを造るために様々な敵と戦ってきた。豪雨や山火事、さらには火山の噴火など。その中でもヨーロッパを襲った「フィロキセラ」はワイン造りに携わる人たちを絶望の淵に追い込んだんだ。この記事ではそんなフィロキセラに対する、ワインを愛する人たちの素晴らしい努力と知恵・戦いを説明するよ。

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。

世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!

このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

 ワインメーカーはワインを造るために様々な敵と戦ってきた。豪雨や山火事、さらには火山の噴火など。その中でもヨーロッパを襲った「フィロキセラ」はワイン造りに携わる人たちを絶望の淵に追い込んだんだ。この記事ではそんなフィロキセラに対する、ワインを愛する人たちの素晴らしい努力と知恵・戦いを説明するよ。

 

繊細なワインの世界

ワインやブドウの世界はとっても繊細で、弱いところもあるんだ。

ブドウの健康状態もワインの品質も、常に自然現象に翻弄されてしまう。そしてそれはときにしばしば不可抗力だったりもする。

豪雨や山火事、さらには火山の噴火によって、世界中のあらゆる地域で、ワインの栽培は打撃を受けてきた。

中でも最悪だったのは、1860年代のフランスとヨーロッパを襲った、目に見えないほどのちいさな敵の襲撃だよ。

このちいさく密かな侵入者は、ワイン造りに携わる人たちを絶望の淵に追い込んだんだ!

あそこまでワイン界を脅かした自然災害は、いまだかつてないんじゃないかな。

もう旧大陸でワインが造られることはないだろう、なんていう考えも、決して大げさじゃなかったくらいなんだ。

もしも、その時代の優秀でこよなくワインを愛する人たちの努力がなかったら、僕たちは二度とワインを飲むことができなかったかもしれない。

ワインのない世界なんて、想像できる?

そんなの、悲しすぎるよね!

 

ちっぽけなサイレントキラー「フィロキセラ」

 

ブドウが大好きなのは、人間とキツネだけじゃないんだ。

ヨーロッパを襲った敵の正体、それはブドウの根や葉を猛烈な勢いで食べてしまう、黄色いちっぽけな羽虫だったんだよ。

ワイン界のお尋ね者、ワインを殺すサイレントキラー、その名も「フィロキセラ」。

ううう!名前を聞いただけで、ぞっとしちゃうよ。

フィロキセラの何が最悪かって、植物の根っこが大好物だってこと。

フィロキセラに根っこを食い尽くされるということは、ほぼ確実な死を意味するんだ。

根っこがちょっと傷ついただけでも、その植物はあらゆる種類の菌類やバクテリアにあっという間に侵入されてしまう。

まさに地獄絵図だ。

 

フランスだけでなく世界中のブドウ栽培者やワイン生産者が、この悲惨な状況を何とか止めようと躍起になった。

フィロキセラはたいてい、地中の根っこの中に潜んでいる。つまり手の届かないところにいるから、通常の農薬は効かないんだ。

唯一有効なのは、水攻めにすること。

ブドウの根っこに潜んでいるフィロキセラをおぼれさせようと、ブドウ栽培者はわざとブドウ畑を水浸しにしたりもした。

 

でも、この方法も失敗に終わってしまった。理由はとっても簡単だよ。

世界的に有名なブドウ畑のほとんどは斜面にあったから、そもそも水攻めができなかったんだ。

 

絶望のあまり、畑に火を放つことを選んだブドウ栽培者やワイン生産者もたくさんいた。ワインの世界にとっては、本当に悲しい時代だったんだよ。

 このときフィロキセラは、実にヨーロッパのブドウ畑の50〜75%を破壊したと言われているんだ。

 

う~ん、虫の話ばかりしていたら、耳の後ろがかゆくなってきちゃった....。

(ボリボリ、ガシガシ......).....う~.....気持ちいい......。

おっと、失礼!本題に戻るね。

 

 

打倒フィロキセラに助けが来た!

 

 

フィロキセラ問題の解決法は、その問題の発端に大きく関わっていたことがわかってきたんだ。

フィロキセラは北アメリカからヨーロッパに持ち込まれたことがわかったんだよ。

当時、世界を旅した人は旅の記念にとエキゾチックな植物を持ち帰るのが流行っていたんだ。たまたま誰かがどこかから、フィロキセラが入り込んだアメリカのつる性植物の根っこかなにかを持ってきちゃったんだろう。

それがもたらした悲劇と言ったら…!

 

多くの人がたくさん試行錯誤をし、ありとあらゆるおまじないめいた方法さえも失敗に終わり、フランスの最高レベルの政治的対立(Sacré bleu!)さえも経て、結局「接ぎ木」が唯一の解決策だってことがわかったんだ。

フィロキセラはアメリカの害虫だから、アメリカのブドウの台木はヨーロッパ産の台木よりもずっとこの虫に対する防衛力を持っていたってわけ。

そこで、アメリカの台木にヨーロッパのブドウ品種(穂木)を接ぎ木するという巧妙な方法がとられた。

この方法は現在でも応用されているんだけど、まさにワインの世界を救った救世主と言えるんじゃないかな!

現在、世界中のほとんどのブドウの木は、アメリカ産の台木を使用しているんだよ。

 

フィロキセラのいない唯一の国「チリ」

 

僕が今回運んできたワインは南米のチリからだけれど、チリはこのサイレントキラー「フィロキセラ」の影響を受けなかった国のひとつなんだ。

なんでかって?

北は乾燥したアタカマ砂漠、東は雄大なアンデス山脈、西は広大な太平洋、南は南極大陸の不毛の氷河に囲まれた地形が自然の要塞となって、チリをフィロキセラという疫病から守ってくれたんだ。

 

ワインを飲むとき、僕はいつでもその素晴らしさに感謝しているけれど、フィロキセラの記事を読んで、さらにこの一杯に対するありがたさが深まったよ。

フィロキセラ!あっちへ行っちゃえ!!!