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Kichi's Journal吉のワイン⽇記

2023/04/12

ブレンドワインの魅力

吉 Kichi

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

ワインの醸造家
エキスパート
ブレンドワイン、またはアッサンブラージュワインとは、2種類以上のブドウ品種から造られるワイン(白、赤、オレンジなど)のことを指しているんだ。今日はそんなブレンドワインについて書いていこう。

 

ああ、永遠の動力を求める者たちよ、お前たちはいくつの無益な空想を追いかけ続けるのだろうか。

自分たちは錬金術師と同じだと思い知るがよい。

- レオナルド・ダ・ヴィンチ、1494年

 

ブレンドワイン、またはアッサンブラージュワインとは、2種類以上のブドウ品種から造られるワイン(白、赤、オレンジなど)のことを指しているんだ。

1種類のブドウ品種だけでできたワインはブレンドとはみなされず、モノヴァリエタル(単一品種)ワインと呼ばれるんだよ。

 

世界には素晴らしいブレンドワインもモノヴァリエタルワインもたくさんあるから、どちらが優れているということじゃないんだ。

たとえて言うなら、モノヴァリエタルワインを飲むことは、ひとつの楽器が主役の協奏曲を聴くようなもの。

熱狂的なソリストが奏でるバイオリンだけを長時間聴き続けるのは、それはそれで至福のひとときだよね?


モノヴァリエタルワインをバイオリンのソリストとするなら、ブレンドワインはオーケストラのようなもの。

さまざまな楽器の組み合わせによって、お互いの音色を高め合う複雑なハーモニーが奏でられるようなイメージなんだよ!

 

 

ブレンドワインを造ってみよう!

世界には数十種類のブドウ品種があり、酸度、タンニン、風味、糖度など、それぞれの品種に特徴があるんだ。

 

ブレンドワインとモノヴァリエタルワインの作り方の違いを分かってもらうために、みんなにちょっとした想像をしてもらおうかな。

たとえば、そう、みんなはワインメーカーで、カベルネ・フランのブドウをたくさん手に入れたとしよう。

さあ、まず何を造ろうか?

そう!カベルネ・フランのモノヴァリエタルワインを造ることができる!

しかも、絶対に美味しいワインができるのは保証付きさ。


カベルネ・フランは、トウガラシ、チリペッパー、イチゴ、ミントやサルビアのようなハーブの風味を持つワインになると予想できるよね。

他にも、中程度のタンニン(ブドウの皮から出る成分で、口の中に砂のような感触を与える)と中程度の酸があって、口の中に含んだ時のフレッシュさはお墨付きだよ。

つまり一言でいえば、洗練されたグリーンなフレーバーと、個性豊かな味わいが期待できるってこと。

 

じゃあ次に、カベルネ・フランのユニークなハーブの特徴にもっと果実のフレーバーを加えたいと思ったとしよう。

例えば、プラム、ラズベリー、ダークフルーツなんかがよさそうだよね。

その場合、メルローを加えるのが理想的だよ。

メルローは親しみやすい品種で、ワインに滑らかさと果実味を与えてくれるんだ!


よしよし、ここまではうまくいった。

でも、もっと冒険してみたいよね?

もう少しワインにストラクチャーを持たせたいとしたらどうだろう。

ストラクチャーとは、アルコールや酸味、タンニン、糖分のバランスが良いという意味だよ。

カベルネ・ソーヴィニヨンという伝説的な品種は、このような特徴を持ち、さらに黒い果実と深い色合いを加えてくれるんだ。


では、ワインに花の香りを加えたいとしたら?

力強さの割に可憐な名前を持つプチ・ヴェルドは、スミレの香りをそえてくれるかもしれない。

こんな風に、これだ!というブレンドが見つかるまで、ワインメーカーは延々と実験と試飲を繰り返すことになるのさ。


ブレンドワインの良し悪しは?

じゃあ、僕たちはブレンドワインに何を期待すればいいんだろう?

あるいはブレンドワインの良し悪しを知るには、どうすればいいのかな?


ブレンドワインの良し悪しとは、ブレンドされたすべてのブドウのバランスとハーモニー、フレーバー、フレッシュさ、香り、そして口の中のシルクのような質感のシンフォニーを指している。 

つまりワイン造りの世界では、たくさんの品種のバランスをとることで、美味しさで世界を支配できちゃうほどのすごいひと樽を生み出すことだってできるんだ。

まるで白衣を着たマッドサイエンティストが、完璧な調合を求めてチューブやフラスコに向かって実験を繰り返しているようなものだね。


ブドウの種類や量を見極めるには、何年もかけて練習し、涙と汗を流し、努力しなくちゃならない。

そしてもちろん、運も必要なんだ。

 

世界のブレンドワイン

じゃあ次に、世界で最も有名なブレンドワインと、そこで使われているブドウの品種を混合率とともに紹介するね。

でも、比率は常に変化するし、ワインメーカーの主観に左右されるものだってことは覚えておいて。

 

フランス:ボルドーブレンド

ブドウの品種と配合:メルロー(66%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(22%)、カベルネ・フラン(9%)、マルベック/カルメネール(3%)

 

イタリア:スーパータスカン

ブドウの品種と配合:サンジョベーゼ(80%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(15%)、カベルネ・フラン(5%)

 

スペイン:プリオラート

ブドウの品種と配合:ガルナッチャ/グルナッシュ(39%)、シラー(12%)、カリニャン/カリニャー(27%)、カベルネ・ソーヴィニヨン(12%)、メルロー(6%)

 

酔っぱらいの補足

 

ブレンドワインを造ることには、測定、制御、計算、観察といった科学的なプロセスが含まれるから、確かに化学を理解する必要がある。

じゃあワインのブレンディングは、化学成分の特徴や働きを知っていたら誰にでもできるじゃないか、と思う人もいるかもしれない。

本当にそうなのかな?

ちょっと考えてみよう。

 

最終的にできあがったブレンドワインは、果たして部分(ブドウ)の総和なのか、それともまったく異なる性質を持つものなのか。

ブドウをただ合わせただけなら、1+1=2のような単なる足し算みたいなものだよね。

でももしワインのブレンドが純粋に化学的なものなら、なんで同じ畑の同じ区画で採れたブドウからできた2つのワインが、まったく違う味を持つものになるんだろう?


この現象を説明するために、フランス人は「テロワール」という言葉を作ったんだ。

テロワールとは、ワインの最終的な出来栄えに影響を与える、ブドウ以外の周囲の要因のこと。

たとえば気候や土壌の種類、日光の当たり具合など、さまざまなものがここに含まれているんだよ。

テロワールは、非常に科学的にさまざまな力を包含しようとする、ずっしりと重い言葉だ。


だからといって、科学がすべての答えを持っているわけではないよ。

ラッキーなことに、この説明がつかない現象に対して「錬金術」というよりわかりやすい言葉がすでに古代文明に生まれているのさ。

錬金術とは、パーツの変形、創造、組み合わせのプロセスであり、最終的にできたものには、それぞれのパーツを分離したときには見いだせないユニークな魔法がかかると考えられている。


ワインは、ボクにとって、そしてすべてのキツネにとって、純粋な錬金術なんだ。

なぜなら、ワインを支配する力は、観察や分析、予測できるものではなく、直感の結果であり、シンクロニシティであり、ブドウの持つパワーと完璧な連携が取れたときに生まれるものだから。