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Kichi's Journal吉のワイン⽇記

2023/08/06

スパークリングワインの歴史 〜こうして人は天に昇る〜

吉 Kichi

ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。

ワインの醸造家
エキスパート
お祝いやご褒美として飲むことの多いスパークリングワイン。スパークリングワインの起源や作り方、製造方法による違いを紹介するよ!

 

スパークリングワインと上流社会の間には、何世紀にもわたる深いつながりがあるんだ。

ルイ16世やマリー・アントワネットの宮廷でもロシア皇帝の宮殿でも、スパークリングワインは幾度となくクリスタルグラスを満たしてきた。

ナポレオン戦争のあとで初めてシャンパンを知ったロシア皇帝は、これを大変気に入ったんだ。

そして、ヴォルガ川を埋め尽くすほどの大量のシャンパンを母なるロシアに輸入したんだよ。


ナポレオンとシャンパン

 

 

一方、戦線の反対側にいたナポレオン・ボナパルトは、すべての軍事作戦にシャンパンのボトルを携行するよう兵士たちに指示したと言われている。

ナポレオンが率いる兵士たちは、将軍がのどを渇かせたときに、剣と同じようにすぐにシャンパンを差し出せるようにしておかなくちゃいけなかったんだ。

「勝利を寿ぐにはシャンパンがふさわしく、敗北を慰めるにはシャンパンが必要だ」という名言を残すくらい、ナポレオンはシャンパンを愛していたんだよ。

また、サーベルでシャンパンの栓を抜くという長年の伝統を始めたのは、ナポレオン自身だとも言われているんだ。

ナポレオンのように、重い帽子をかぶって馬に乗った状態で、サーベルを抜いてシャンパンの栓を抜くところを想像してみて。

なかなか難しそうだよね!


でもいくらナポレオンが愛したからといって、シャンパンの人気が泡のようにすぐに盛り上がったわけではなかった。

なぜなら、ワインに泡が生じることは長い間、欠点と見なされてきたからだよ。

その昔、フランス人はスパークリングワインを劣ったものとみなし、嫌っていたんだ。

(逆に泡好きのイギリス人は、すぐにシャンパンに夢中になったんだけどね!)

 

ドン・ペリニヨンは泡を消そうとしていた?!

 

伝説のシャンパン、ドン・ペリニヨンの由来になったベネディクト会の修道士、ドン・ピエール・ペリニヨンは、セラーの責任者として47年の生涯を白ワインの泡を消すことに費やした。

当時、白ワインが瓶の中で泡立つということは、造り手がきちんと温度管理をしなかったことを意味していたんだ。

中でも、寒さが一番の大敵だった。

気温が下がると発酵も進むから、造り手はワインの発酵段階が終わったと勘違いしてしまう。

でも、それは大きな間違いなんだ!何日かすると気温が上がり、発酵が再開するから。

つまり、ワインの瓶の内に泡が生じることは、素人が品質の低いワインを造った結果だと思われていたんだ。


そして瓶内に生じた泡は、危険な時限爆弾でもあった。

当時ワインは薄いガラス瓶に保存されていたんだけど、発酵中のブドウ果汁はとっても気まぐれで、内圧が高まると瓶が激しい爆発を起こしてしまう。

そして時には瓶が次々に爆発して、そこら中にガラスの破片が飛び散ったりもした。

当時のセラーマスターが傷だらけになっているのは珍しいことではなく、まるで当然のことのように受け入れられていたんだよ。

ナポレオンが爆弾代わりに敵にボトルの1本や2本を投げつけることを思いつかなかったのは、この素晴らしい飲み物を無駄にしたくなかったからかもね。

 

スパークリングワインを飲む理由

 

スパークリングワイン、とりわけシャンパンは、歴史的にエリート主義のブルジョワの象徴だと考えられてきた。

でも僕たちにとっては幸運なことに、現代では、シャンパンを飲むのにポンパドゥール夫人やオーストリア・ハンガリー帝国皇帝になる必要はないよね。

今では昇進祝いから新年のお祝いまで、誰でも気軽にスパークリングワインを買うことができる。

でも、なんで僕たちは、お祝いや勝利のご褒美としてスパークリングワインを飲むんだろう?

アルコールが禁止されている国でも、お祝いの席のためにノンアルコールのスパークリングワインが存在するみたいだし…。

考えてみたら、不思議だと思わない?

ワインが世界中の色々な国や文化において、幸せな時間、成功、達成、新しいものの誕生と結びついているって。

人間がありとあらゆることについて対立するこの世界で、ワインに関しては手を取り合ってうなずくというのは、とても興味深いよね。


じゃあ、スパークリングの何が僕たちを惹きつけてやまないんだろう?

繊細でコケティッシュな泡かな?

それとも、パーティーでスパークリングワイン専用の背の高いフルートグラスを持つ人を、まるでパチパチとはぜる金の泡のように取り囲む魅惑的なオーラかな?

もしかしたら、その場にいる全員を熱狂の渦に巻き込む、ポップなサウンドのせいかもしれない。

いやひょっとしたら、コルク栓を抜くことがボクたちの「束縛された精神の解放」を表しているんだったりして?

深く考えすぎ?(そうだね、ちょっと言い過ぎたかも…。)

理由はどうであれ、ボクたちが満場一致で、スパークリングワインを最高の時と結びつけてきたことは間違いないよね。

 

スパークリングワイン ≠ シャンパン

さてと、本格的な話を始める前に、もしかしてフランスの読者に誤解を与えたり、イヤな思いをさせてしまったりしないように、1点だけはっきりとさせておかなくちゃいけないことがある。

フランスのシャンパーニュ・ハウス組合を、怒りの泡まみれ(!)にしたくないしね。

それは、シャンパンはスパークリングワインの1つだけど、すべてのスパークリングワインがシャンパンとみなされるわけではない、ってこと。

実際にたとえフランス産であっても、シャンパーニュ地方以外で生産されたワインを「シャンパーニュ」と呼ぶことはできないんだ。

そこでわかりやすくするために、フランスのシャンパーニュ地方以外で造られた発泡性のワインを「スパークリングワイン」と呼ぶことにしよう。

こうやって原産地呼称が保護されているのにはちゃんと理由があるし、この2つの呼び方がごちゃごちゃにされている、ってフランス人が文句を言うのも無理はないと思う。

シャンパーニュの呼称は地理的、文化的、経済的なものなんだ。

そして、シャンパンって呼び方は、シャンパーニュ地方の生産者たちによって戦略的に作られたものであるにしても(ナポレオンが自らを皇帝として戴冠させたことと似ているかも)、十分に価値のあるものだってことは間違いないよね。

 

スパークリングワインの作り方

ではまず、シャンパンであれスパークリングであれ、この歴史的に高く評価されている飲み物がどのように造られるのか、そしてなぜこんなにも素晴らしい味わいなのか、詳しく見てみよう。

 

スパークリングワインを造るには、まずベースとなるワインを造らなければならない。

ベースワインとは普通の白ワインのブレンドのことで、ブドウ果汁に酵母を加えるだけで、他の白ワインと同じように通常の一次発酵プロセスを経て造られるんだ。

ベースワインの品質は、最終的にできあがるスパークリングワインの全体的な品質を大きく左右することを覚えておいてね。

スパークリングのベースとなるワインにはどんなブドウでも使えるんだけど、伝統的に(特にシャンパンでは)、誰もが認める三種から造られることが多いよ。

つまり、シャルドネ、ピノ・ムニエ、ピノ・ノワールだ。

白ワインを造るのに黒ブドウを使うの?と思う人もいるかもね。

ここで、ワインはブドウの果皮と果汁が接触することによって色が付くことを思い出してほしい。

つまり、黒ブドウを注意深く圧搾すれば、果皮は破れないし、着色することもないんだ。

同じ理由で、果汁から果皮を素早く取り除かなくちゃいけない。

黒ブドウから白ワインを造る場合、フランス語で「黒から白」を意味するブラン・ド・ノワールと呼ばれるんだよ。

そして、白ブドウだけで白ワインを造る場合は...。

そう、ご想像の通り、ブラン・ド・ブランだ。

 

 

スパークリングワインの製法

 スパークリングワインの製造方法はいくつかあるんだけど、あまり細かいことを言って読者のみなさんが退屈するといけないから、最も重要な3つの方法だけをお伝えするね。

 

伝統的製法

伝統的製法は、すべての製法の中で一番有名だよ。

ベースとなるワインのブレンドができたところからが、面白いんだ。

二次発酵を開始させるために(これが繊細な泡の素となるよ)、酵母と砂糖を瓶の中のベースワインに加えて栓をする。

そしてコルクをしたワインを、澱(酵母の死骸)の上で熟成させる。

セカンダリーワインが澱と接触したまま放置される時間が長ければ長いほど、複雑な味わいや、ボクたちが大好きなパンやブリオッシュの香りが増すんだ。

 

伝統的なスパークリングワイン醸造の次のステップは、リドリングだよ。

リドリングとは、すべてのボトルをひとつずつひっくり返し、木製の棚に45度の角度で置く工程のこと。

数時間おきに1/4インチずつ、何週間にもわたってゆっくりゆっくり、ボトルを回すんだ。

この過程で澱が沈殿し、瓶の口元に集まってくる。

すべての澱が集まった後で、ボトルの口だけを凍らせる。

コルクを抜くと、ワインの圧力で瓶から檻のかたまりがきれいに押し出され、美しく澄んだ白ワインができあがるってわけ。

なんて賢いんだろう!

スパークリングワインは酸度が高いため、ドサージュと呼ばれる工程でワインに糖分を加え、最後にもう一度栓をする。

さらに数週間、瓶内で熟成させれば、伝統的製法のスパークリングワインのできあがり!

もうお分かりだと思うけれど、伝統的製法はとっても手間と時間がかかるだけではなく、コストもかかる手法なんだよ。

 

タンク方式

フランスでは 「シャルマ方式」、イタリアでは 「マルティノッティ方式」とも呼ばれるタンク方式は、スパークリングワインを大量に、しかも短時間で造る手法だよ。

その名の通り、ベースとなるワインは伝統的製法のようにそれぞれのボトルで二次発酵させるのではなく、酵母と糖分を添加して大きなタンクで二次発酵させる。

このタンクでワインに圧力をかけて、発酵プロセスを加速させるんだ。

万が一、圧力が手に負えなくなった場合に備えて、タンク内の温度を下げて発酵を遅らせる。

こうしてタンクで造られたワインは、濾過されて糖分が追加されたのち、瓶詰めされる。

これで完成!

なんて簡単なんだろう!

タンク方式は、より多くのスパークリングをより手頃な価格で生産するのに理想的な方法なんだよ。

 

先祖伝来の製法

スパークリングワインを造るために発明された最初の方法のひとつであるにもかかわらず、先祖伝来の製法はちょっとルール違反だと言えるかもしれない。

それはなんと、二次発酵を行わないから!

なんでそんなことが可能なんだろう?

まず、ベースとなるワインを一次発酵させるんだけど、その時にできた泡をボトルに素早く閉じ込めれば、最終的にスパークリングワインになるってわけ。

一次発酵が瓶の中で続くことで、二酸化炭素(泡)を発生させるんだ。

このタイプのワインは、伝統的製法のものよりも果実味が豊かで、発泡性は低いことが多い。

澱はどうなるのかって?

ワインが澱と十分に触れ合った後で、デカンタージュしちゃえばいい。

簡単でしょ?

 

 

スパークリングワインの甘さのレベル

みなさんももうお分かりだと思うけど、スパークリングワインやシャンパンには、何らかの方法で糖分が加えられている。

実質的に糖分ゼロのスパークリングはナチュレと呼ばれるものだけで、ドゥー・スパークリングにいたっては、炭酸飲料とほぼ同じくらい大量の糖分を含んでいるんだよ!

世界のほとんどのスパークリングワインは、ブリュットかエクストラ・ブリュットだ。

もちろん、どれだけ甘いスパークリングが好きかは個人の好みによるけどね。

 

糖度

ネイチャー・スパークリング:0-3 g/L

エクストラ・ブリュット・スパークリング:0-8g/L

ブリュット・スパークリング:0-12 g/L

ドゥミ・セック・スパークリング:32-50 g/L

ドゥー・スパークリング:50+ g/L

 

 ユニークなスパークリングワイン

GrapeFoxでは、異なる国、異なるブドウ、異なる製法で造られた、ユニークな2つのスパークリングワイン(シャンパンではないよ!)を紹介するね。

 

マグノリア・スパークリング・エクストラ・ブリュット

 

マグノリア・スパークリングは、アメリカのワインメーカー、エドワード・フラハティがチリで造った、シャルドネ、パイス、ピノ・ノワールの珍しいブレンドのスパークリングだよ。

グラスを鼻に近づけると、ブリオッシュとライラックやジャスミンなどの花の香りがあり、桃とパン粉のニュアンスが漂う。

酸味は中程度。

辛口で、口に含むとネクタリンやスミレのお菓子の風味が感じられるよ。

泡(ペルラージュ)は厚みがあり、一定して口の中で小気味よくはじける。

最後にほのかな苦味が感じられるかも。

美しいラベルも印象的だよ。

このラベルには、悪魔ですら夢中になったほど、美しい乙女の物語が描かれているんだ。

ボクは、彼女が右手に持っている美味しいスパークリングワインが、悪魔を酔わせたんだと思うけどね!

 

ワイン名:マグノリア・スパークリング・エクストラ・ブリュット

製法:伝統的製法

ブドウ品種:シャルドネ、パイス、ピノ・ノワール

ヴィンテージ:2018

熟成:瓶詰めまで30ヶ月

糖度:8.4 g/L

アルコール度数:13%

マグノリア・スパークリング・エクストラ・ブリュットを購入する

 

ラ・ブルモサ

 

次にご紹介するのは、エレガントなトスカーナ産のバラのスプマンテ、ラ・ブルモーザだよ。

先祖伝来の製法で造られるこのソフトでフルーティーなスパークリングワインは、ファットリア・ラ・ヴィアッラの最も誇るべき作品のひとつと言えるんじゃないかな。

鼻を近づけると、ラズベリーやストロベリーなどの森の果実、ドッグローズやパン生地の香りが漂う。

口に含むと、無数の繊細な泡が溢れ、ドライで甘みとまろやかさ、そして程よい酸味が感じられるよ。

 

ワイン名:ラ・ブルモサ

ブドウ品種:ピノ・ネロ

ヴィンテージ:2022年

熟成:瓶詰めまで30ヶ月

糖度:2.7 g/L

アルコール度数:12.5%