哲学者の町、 アテネへ

ちょうどアポロ計画のあとを継ぐアルテミス計画によるロケット発射が検討されていたころ、僕はデロス島を飛び立った。

次の目的地は、民主主義と哲学的思考の発祥の地であり、プラトンがトーガを着て通りを歩き、大学の講堂が偉大な哲学者たちの思考を今に伝え、今日に至るまでその気配が空気中にただよっている街。

そう、アテネへようこそ！

民主主義発祥の地

アテネが、世界中の人々がずっと大切にしてきた価値観に大きな影響を及ぼしたことは間違いない。

そのひとつの証拠として、アテネは民主主義の発祥の地であり、ギリシャの偉大な悲劇家、ソフォクレスの出身地でもあるんだ。

古代アテネは、文明、理想、芸術、数学、そして知的な言説の象徴であり、あらゆる学問の殿堂でもあった。

アテネは世界の知識人（そして裕福な人々）の中心となる場所だったのさ。

だから何者かになりたければ、この美しい都市で起こっていることにアンテナを張り続けていなければならなかったんだよ。

光り輝く城塞　パルテノン神殿

僕がアテネで最初に訪れたのは、パルテノン神殿だ。（みなさんの予想通りだね！）

パルテノン神殿は、アクロポリスの丘の上にそびえ立ち、黄金のペンテリコン大理石で彫られた堂々たる柱が街全体を見守る、光り輝く城塞だよ。

紀元前5世紀にペリクレスの命令によって建てられたこの神殿は、2世紀半の間、さまざまな役割を果たした。

祭壇は実際には発見されていないけれど、聖母アテナ女神の神殿であったという説もあるんだ。

これは、パルテノン神殿がオスマン・トルコに略奪されてモスクとなり、ベネチア軍に爆撃され、さらにはローマ帝国によって改装されたという事実と関係があるかもしれないね。

パルテノン神殿の本当の目的については、さまざまな意見がある。

アテナ女神に捧げられた壮麗な神殿だったという説もあれば、ギリシャ最大の中央銀行だったという説も。

デロス島とデロス同盟について、歴史で習ったことを覚えてる？

パルテノン神殿には、デロス人の資産や富がすべて保管されていたはずなんだ。

ひとつだけ確かなのは、アクロポリスは、その平らな丘の上にある他の建造物（後で詳しく話すね）と同じように、偉大な建築、数学、比率、幾何学への賛辞としての意味を持っていたってことだよ。

だからこそ、パルテノン神殿は高度古典主義時代にアテネがどれほど偉大だったかの象徴といえるんだ。

ギリシア建築様式の中で最もシンプルなドーリア式で作られていて、個人的には僕の一番のお気に入りだよ。

みなさんにも、写真でその素晴らしさを少しお裾分けするね！

女神アテナに捧げられた美しいエレクティオン神殿

アクロポリスの北側には、女神アテナに捧げられた美しいエレクティオン神殿が建っている。

隣にある紀元前421年頃に建てられた建造物の柱には、カリアティッドと呼ばれる6人の乙女が描かれているよ。（現在は5人しかいないけどね。）

この乙女たちは、三つ編みにした髪の毛の一本一本を見分けることができるほど精巧に彫られているんだ。

6人目の乙女はどうしたのかって？

彼女は大英博物館に所蔵されていて、ギリシャ側が何度も返してほしいとお願いしているにもかかわらず、いまだに返還されていないのさ。

ワインの神ディオニュソスに捧げられたディオニュソス劇場

アクロポリスに位置するこの見事な円形劇場は、紀元前5世紀に建てられた。

エウリピデス、ソフォクレス、アリストファネスが書いた、全時代を通して一番重要な数々のギリシャ悲劇や喜劇がここで上演されたんだよ。

この円形劇場は、ギリシャ神話のワインの神として知られるディオニュソスに捧げられた。

古代ギリシャ人にとってディオニュソスは、享楽の神（今の言葉でいえばパーティーの神！）であり、豊穣の神でもあったんだ。

享楽と豊穣。この2つにどんな関連があるか、みなさんならわかるよね？

実際にギリシャに行ったときに、ディオニュソスがアクロポリスの頂上で360度の眺めを楽しんでいる、というか控えめに言っても 「大興奮 」しているような...、すごく生々しい描写を見ても驚かないでね。

アクロポリスの頂上で360度の眺望を楽しむ観光客。

美しい太陽が放つまばゆい光の元で、ギリシャ国旗が誇らしげに風にたなびいている。