Kichi's Journal吉のワイン⽇記
2026/10/21
極上ペルー料理と希少なチリワインの至高のペアリング

吉 Kichi
ワインを造り、世界中のワインについて学び、そしてワインをこよなく愛するキツネの吉だよ。
世界中のすばらしいワインをみんなに知って欲しいと思っているんだ!
このブログでは、ブドウやワインのこと、生産国や歴史について、僕が知っているちょっとした豆知識を紹介していくね。
ワインの醸造家
エキスパート
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REY peruvian cuisineとチリワインのコラボディナーをレポート!歴史的な繋がりを持つ両国が魅せる、極上ペルー料理と希少なチリワインの至高のペアリングをご紹介します。
Contents
5世紀前からの繋がり:ペルーとチリの食とワイン
ペルーとチリにおける「食とワインの繋がり」は今から約500年前、金鉱に魅せられたスペインのコンキスタドール(征服者)たちが南米大陸へ足を踏み入れ、植民地を建設して自らの信仰を広めようとした時代にまで遡ります。
天然資源に恵まれたペルーは、やがてスペイン王冠の「至宝」と呼ぶべき存在となり、リマはペルー副王領の新たな行政的中枢としてクスコに取って代わりました。
スペイン人がチリよりも約10年早くペルーでブドウを植えワインを造り始めていましたが、歴史家たちによると、植民地内でのワイン需要の高まりがチリでの生産を促し、太平洋沿岸を北上する輸送網を生み出したとされています。
1576年の王室勘定記録には、チリからペルーや副王領の管轄下にあった地域(ボリビアなど)へワインが出荷されていたことが記されています。この中には、イタタ・ヴァレー産のワインも含まれていたかもしれません。イタタ・ヴァレーは、現在のセントラル・ヴァレーが台頭する以前の、チリワイン造りの発祥地と考えられています。
当時の記録には、イギリスの海賊(イギリス側は優雅に「私掠船乗り」と呼びましたが)が、スペインの貿易を妨害する目的で、チリからペルーへワインを運ぶガレオン船や商船を襲撃したとさえ残っています。船乗りとワインの切っても切れない関係は、まさに「飛んで火に入る夏の虫」のようなものだったのでしょう。
厨房とセラーで手を取り合う、2つの国
それから数百年の間、特に太平洋戦争以降、チリとペルーは両国を繋ぐ共通点(例えばインカ帝国という豊かな歴史)よりも、地理的・文化的な「違い」に目を向ける傾向がありました。
そこで今回、ReyとGrapeFoxは、この素晴らしく兄弟愛に満ちた2つの国を繋ぐ側面にスポットを当てたいと考えました。極上のペルー料理と洗練されたチリワインをペアリングするイベントを2夜にわたって開催し、「両国が厨房とセラーで力を合わせたときに何が生まれるのか」を皆様にお披露目したのです。
ここからは、当日の素晴らしいメニューとペアリングのストーリーをご紹介します。

ディナーコースとペアリング
冷菜:REY・ア・ラ・チャラカ × ルーサンヌ
柚子香る南米産キーライムのジュレ 季節野菜と果実、旬魚のサルサとクリームソース

ペルーを代表する港町カヤオ(リマ郊外)の名物「チャラカ・ソース」(赤玉ねぎ、トマト、ライム、新鮮な魚介で作るレリッシュ)を洗練された形にアレンジした美しく涼やかな一皿です。
(ペルーの方言で「Chalaca(Chalaco)」は「カヤオの/カヤオに関する」という意味を持ちます。)ワイン:Attilio & Mochi トゥンケン ルーサンヌ 2023
v当初は同ワイナリーの「トゥンケン ソーヴィニヨン・ブラン 2023」が合うと考えており、実際悪くはありませんでした。しかし、このルーサンヌ100%を試した瞬間、印象が一変したのです!
ソーヴィニヨン・ブランも酸味は十分でしたが、少しトロピカルすぎました。この料理に真のまとまりを与えるには、より鮮烈な柑橘のプロファイルが必要でした。
私が日頃から熱弁しているルーサンヌは、まさにこの料理が求めていた文旦の果皮のようなニュアンスと豊かな酸味を備えていました。さらに、ルーサンヌ特有の蜂の巣を思わせるほんのりとしたワックス感が、料理のクリーム要素と見事に調和。希少さゆえに見落とされがちな品種ですが、ペルーの冷製シーフードにおいて、定番のシャルドネなどよりも遥かに面白く劇的な選択肢となることが証明されました。
前菜:チャンチョ・アル・マニ × イタタ・ヴァレー産サンソー
宮崎産まるみ豚のチャチロンと秋野菜のソテー ピーナッツと赤味噌のソース ワカタイのジェノベーゼ

「豚バラ肉は間違いない(ペアリングにおいて)」というのは私の持論ですが、今回の一皿はその持論を超えてもはや信条の域に達していました。ソウルフードでありながら実にエレガント。ジューシーな脂身とナッツ香るクリーミーなソースに、見事に焼き上げられた日本の野菜が添えられ、まるで蝶が羽を広げたかのように美しく盛り付けられていました。
この料理にはロゼかライトボディーの赤が必要でした。イベント前に同ワイナリーのロゼ(アーリーハーベスト 2018)が完売したことで、結果としてイタタ・ヴァレー産サンソー100%という、より希少で素晴らしいペアリングに行き着くことができました。
チリにおける単一品種のサンソーは非常に希少で、その大半はイタタ・ヴァレーのグアリリウエという極小のエリアに身を潜めています。1930年代初頭に植えられた樹齢100年近い古木は、ビルの4階に相当する深さまで根を伸ばしており、花崗岩質土壌と相まって、フレッシュな赤系果実と心地よいタンニンをもたらしてくれます。
アルコール度数わずか11%と低タンニンなこのサンソーは、豚肉の繊細なタンパク質や脂身の甘みと理想的にマッチ。さらに、30%全房発酵由来の青々とした茎のようなニュアンスが、ゴボウの土っぽさやナスの食感と見事にシンクロしていました。文句なしにその夜ベストのペアリングだったと言えます。
魚:カウサ・デ・寿司 × ソーヴィニヨン・ブラン
穴子寿司に見立てた岩手産の秋刀魚と温かいカウサ ピスコ香るペルー産醤油のツメ 蕪のガリを添えて
ペルーの伝統料理「カウサ」(味付けしたマッシュポテトを冷やして重ねた料理)に、日本の和のテイストを加えた遊び心あふれる一皿です。メインに選ばれたのは秋の味覚・サンマ。ピスコと醤油の香ばしいソースで調理されたサンマが、握り寿司を思わせるマッシュポテトの上に鎮座しています。
クリーミーで澱粉質なポテト、サンマとアンチョビの塩気と旨味、そしてピスコの華やかな香り——多層的な味わいを持つこの料理には、同等に多層的なワインが必要でした。
香りが豊かで、魚の旨味やポテトのコクに負けないボディがあり、大根やアンチョビを受け止める酸を持つワイン……まさにカサブランカ・ヴァレー産のソーヴィニヨン・ブランがうってつけでした。
チリ(カサブランカ)のソーヴィニヨン・ブランは、ニュージーランド産のようなトロピカルな華やかさと、フランス・サンセールのような凛としたグリーン系のニュアンスを兼ね備えているのが最大の魅力です。グラス一杯で飲んでも、食事と合わせても最高の力を発揮してくれました。
メイン:キノコ・デ・ガジーナ × カウケネス レッドブレンド
ポルチーニ茸香る黄色い唐辛子とチーズのシチュー 秋茸と森林鶏のソテーとチチャ香る林檎のポシェ REYのイチジク葉シロップとともに
旨味たっぷりの鶏肉とキノコの料理に、小さなテラコッタで添えられた「アルガロビーナ・シロップ(ペルー北部の木の実から作られる自然な甘みのシロップ)」が、ペアリングの戦略を大きく変えるゲームチェンジャーとなりました。
料理に「甘み」が加わると、ワインにも同等の甘みが求められると同時に、甘みと相性の悪い主張の強いタンニンは排除しなければなりません。
ワイン:Flaherty Wines カウケネス レッドブレンド 2021
選ばれたのはアルコール度数15%の力強い赤ブレンディングワインでした。「大きめのタンニンと甘みは相性が悪いのでは?」と思われるかもしれませんが、このワインが持つシロップのようなリッチな食感と心地よい残糖分が、見事にこの難問を解決してくれたのです。
シルキーなタンニン、黒系果実の芳醇さ、そしてパイ・スパイスの香りがアルガロビーナと見事に出会い、重苦しさを一切感じさせない調和の取れたペアリングが完成しました。
REYの〆:おじや・デ・ガジーナ × ピノ・ノワール
REYのスペシャリテ★雌鶏の出汁と香味野菜の濃厚スープ ロコト唐辛子とライム添え
ハルオシェフによる温かい最後の料理は、体に染み渡る旨味たっぷりのブロースープ。「旨味とは何か?」という問いに対するシェフなりの答えであり、ワインの4〜5杯目というタイミングにも完璧な癒しの一皿でした。
ワイン: Attilio & Mochi ピノ・ノワール 2023
ボトルの中で緩やかに熟成が進んだこのピノ・ノワールは、ソムリエたちが「熟成した普洱(プーアル)茶」に例えるような、出汁やキノコに通じる深い土っぽさと旨味を備えていました。
キメの細かいしなやかなタンニンのおかげで、薬味のロコト・チリの辛味とも喧嘩することなく、見事に調和。スープや出汁と赤ワインを合わせるという体験は私にとっても初めてでしたが、目から鱗が落ちるほどの素晴らしい相性でした。
デザート:エラード・デ・ルクマ・コン・ほうじ茶 × Nikita Brut
アンデスフルーツルクマとほうじ茶のアイス 季節果実のコンポートとアルガロビーナソース

ワイン: Dussaillant-Lehmann ニキタ スパークリング ブリュット 2019
繊細で控えめな甘さのデザートに合わせて選んだのは、瓶内二次発酵(シャンパーニュ製法)で造られたスパークリングワインです。
エクストラ・ブリュットでは酸が立ちすぎてしまうため、適度なドサージュ(糖分添加)が施されたブリュットが最適でした。ブリオッシュやビスケットのような酵母由来の豊かな香りがデザートを引き立て、夜の締めくくりにふさわしい祝福と華やかさを添えてくれました。
おわりに
GrapeFoxの特別な料理とワインのイベントにご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました! ゲストの皆様が笑顔でグラスを傾ける姿を拝見でき、心から嬉しく思っております。

それでは、また次のイベントでお会いしましょう!

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