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Kichi’s Universe吉の物語

Chapter 2

「ようこそ、12匹のキツネ騎士団の諸君!」 

堂々とそびえたつ城の奥に位置する、天井の高い大広間の真ん中で長老は言いました。


木製の扉には精密なブドウの房が彫られており、ロウソクの灯が広々とした部屋を照らしています。城の中の部屋は馬蹄形のアーチで区切られており、互いに入り組みながらどこまでも続いているようでした。どの部屋にもペルシャ絨毯が敷かれ、どっしりとしたソファーが置かれています。廊下の先にあるこの大広間には、鉄製の丸いテーブルと12脚の椅子が置かれていました。その上には青やピンクの美しいアジサイが花瓶に生けられ、天井の巨大なシャンデリアには数えきれないほどのたくさんの白いロウソクが立てられています。壁には、歴代この城を守ってきたと思われるキツネたちの肖像画が立派に飾られていました。絵の中のキツネたちは、しっぽでブドウの房を鼻さきに掲げています。片方の足に青い炎、もう片方の足にバラを捧げ持ったキツネもいました。誇らしげな横顔は、背後に漂う雲によってさらに風格を増しているようでした。


「だれなのかなぁ、この人たち」

吉が絵を眺めながら考えていると、長老の声が響きました。

「諸君、よくぞ集まってくれた」

長老は背が高く、灰色の毛皮とエメラルドグリーンの目をしていました。その優しい声が、初めての会合に参加する吉の緊張や緊張を解きほぐしてくれました。

「諸君の多くは、これまで多くの苦労をしてきたであろう。しかし、ようやくその苦労が報われるときが来たのじゃ。なんと、我々が1,000回浴びるように飲んでもなくならないほど大量のワインが、ほれ!ここにあるのじゃぞ!」と長老は言いました。

キツネたちはくすくすと笑ってから、一斉に長老に向かってお辞儀をしました。

「ウオッホン。諸君はなぜ我々が今日ここに集まったか、その理由をすでに知っておろう。我々の新しいメンバー、吉を皆で歓迎しよう。吉はキツネの八の孫である!八はわしと同じく、この偉大なキツネ騎士団の創設者の一人なのじゃ!」

11人のキツネは、吉に深々とお辞儀をしました。吉は緊張はしていませんでしたが、少し気後れしてしまいました。こんな風に注目されることに、慣れていなかったからです。

キツネたちはみんな太い尻尾でバランスをとりながら、堂々と背筋を伸ばして二本足で立っていました。吉もようやく二本足で歩くことを覚え始め、だいぶ身に付いてきていました。吉もキツネも同じように毛並みはつやつやと輝いています。この中で長老だけが繊細な刺繍が施されたサテンの着物を着ています。

吉はまた、しっぽが一本しかないキツネは自分だけだということに気がつきました。他のキツネはみんな、2本から8本のしっぽを持っています。長老のしっぽが9本あるところを見ると、これはキツネ騎士団内の地位に対応しているのかもしれないなと吉は思いました。

「さて、吉よ。お前ももうわかっているじゃろうが、我々の最大にして唯一の目的は、ワインの栽培と教育を通じて人類を助けることじゃ。」 

長老は、真剣な口調で続けました。

「ワインは、キツネと人間が作り出すことができる最高の神秘であるということは、皆もわかっておろう。なにひとつワインを超えることはできない。ワインは詩そのもの、そうではないか?そう...まさに優れた詩が...至福の喜びをもたらす飲み物になったということじゃ。おっと、またしても脱線してしまった・・。どうもワインについて話し出すと興奮し過ぎていかんな。ウォッホン! とにかく、吉よ、大きな喜びに満ちた旅がお前を待っておるぞ。ワイン造りの世界は挑戦そのものじゃ。お前も、これから難題にぶつかることもあろう。じゃが、すべての困難は創造性を発揮し、創意工夫をするチャンスだということを忘れてはならん。そうでなければ、ワイン造りはこんなにも長い年月続くことはなかったじゃろう。困難にぶつかり、暗闇の中でもがき、絶望に喘ぐときにこそ、目を見開いて創造性を発揮するのじゃ。」

「さて、長く話し過ぎたようじゃ。我々キツネ騎士団は皆、お前がワインについて学び、人間の世界に貢献するための長い旅がうまくいくことを祈っておるぞ!。そして、人間がブドウを栽培していることに大いなる感謝を捧げようではないか」

「ありがとうございます、長老さま」 

吉はしっぽを胸の前に巻き付け、深くお辞儀をしました。

「僕、精いっぱい頑張ります!」

「すばらしい!これをもって吉、お前を正式にわれらキツネ騎士団に迎え入れるとしよう。皆、この若いキツネの健康と未来のために杯をかわそうではないか。カンパイ!」

長老がそう言うと、キツネたちは一斉に歓声をあげました。 

「キツネ騎士団!カンパイ!」

12匹のキツネは、背中を中心に向けて円を描くように立ち、それぞれのしっぽを中央で組み合わせました。

 

「高貴なブドウに恥じぬよう、我々が自らの手で幸運を掴み取れますように!勇壮なブドウの枝に恥じぬよう、我々の努力によって史上最高のワインを世界に広げられますように!」

キツネたちはワインを飲み干すと、しっぽを回転させて素早く宙に舞い上がりました。そして長老にお辞儀をすると、たちまち消えてしまいました。

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